当たり前のことだが、年と共にできなくなることがある。

駅の階段を降りていて、肩からかけているバッグから定期券を取り出そうとしている時に、ケータイが鳴ったりする。まず、そういう時、手に持ってた荷物を落とすか、階段を踏み外しそうになる。

料理だって、仕事と子育ての合間に、8本の手があるかのように手早く作っていた。いくつも同時進行でやるのは当然だったし、階段は駆け上がり駆け降りるものだった。そして今でもついやってしまうので「若いつもりでいちゃダメ」と娘に怒られている。その娘がおなかにいた時も、新幹線や飛行機に乗り遅れまいと走っていたものだ。

体力的にできなくなることが増えたが、めっきり減ったのは結婚式だ。代りに葬式ばかりが増え続ける。

ところが、久しぶりに掛けた電話の向うから「私、再婚したのよ」と明るい声が返ってきた。40年ほど前、私がニコニコ離婚講座や離婚女性のネットワーク「ハンド・イン・ハンドの会」を始めた頃から手伝ってくれていた人だ。多分、80近くになるはずだ。選挙の下働きもしてくれていたが、この3年ほど足を悪くしていた。

「再婚?」素っ頓狂な声をあげた私に彼女は言った。「元夫が入院して、息子はやっぱり父親だから40年前も前に別れたといっても面倒見てたのよ」その元夫がいよいよという時、息子に言われ彼女は会いに行った。そして入籍したのだという。

それって再婚というより復縁。まあ、言葉はどっちでもいいか。
「じゃあ、年金が入るのね」
「もちろん」

彼女も働いてきたが、離婚女性の年金はたかが知れている。国民年金の満額をもらえている人はほとんどいない。そこへ夫の遺族年金が入る。
「良かったね」
「うん、やっぱり気持が楽になった」

難病も抱えて一人暮らしの彼女だが「身体の調子もいいのよ。勧めてくれた息子と嫁さんに感謝している」

うーん、こんな手があったのか!

えっ、80歳で再婚?