スーツを着たお父さんが、バギーを押したり抱っこひもで子どもを保育園に送るらしい姿を最近よく見かける。30数年前、私が娘を保育園に送迎していた頃は余り見かけなかった姿だ。当時、保母さんたちに聞いた話では、ままごと遊びで、お父さん役は人気がなかったらしい。まずお母さん役が決まる。子ども役も決まるのに、お父さんのなり手がいない。
「それはお父さんって『行ってきます』と会社に行ったら、子どもたちが寝てからしか帰ってこないでしょ。だから何もすることなくてお父さん役をやりたくないんです、子どもたちは」

高度経済成長期で、男性は「親の死に目にも会えない」という猛烈社員、エコノミックアニマルだった。「オー、モーレツ」というコマーシャルが流行っていたし、女の子にもてはやされたリカちゃん人形にはママもおばあちゃんもいたが、子どもたちのままごと遊び同様、パパ人形はいなかった。
それが今ではパパ人形はフランス帰りとかでリカちゃんの家族に登場したし、出勤前に保育園へ子どもを送るお父さんたちも増えてきたのだ。
世界レベルでみると、我が国の男性の育児参加、家事参加はまだまだ低い。女性たちの不満も大きく「ワンオペ」でノイローゼが爆発寸前という女性も多い。それでも父子の関わりは増え続けている。関わりが増えれば子どもへの愛情も深まる。

これまで3万件もの夫婦・家族の相談を受けてきたが、血のつながりよりも、関わった時間のほうが重要だと思わせられるケースは多々あった。
そのせいだろう、最近は夫婦が別れても子どもとは会い続けたいという父親が増えてきた。以前は離婚した途端、一切会いにも来なければ連絡もしてこない父親が大半だった。
「仕事ばっかりしていて、子どもと関わらなかったから、かわいくないのかしら」
「会えば養育費の責任が発生すると思っているのかも」と母親たちは嘆いていた。
もちろん、子どもと父親の面会を実施している人は、「せっかく別れたのに、関わりがあると面倒で」と「子どもと父親の問題」と割り切れない人も多かった。

夫に好きな女性ができ、数年間すったもんだした挙句、小学生と中学生を連れて別れたAさん。上の子が高校合格したお祝いを父親がしてくれるというから、「ちゃんとお父さんと会ったらお金もらいなさいよ」と言って送り出したという。ところが娘たちは戻ってきて「お父さんとこ、赤ちゃん産まれて物入りで大変みたいだからお金のこと言えなかった」。
Aさん曰く、「まあね、向うに子どもができても、私に似てたって喜んでるような優しい子どもたちに育ってくれたことはいいけど、こっちだって、きちきちでやっているのに」。

40年近く前にスタートさせた離婚女性のネットワーク「ハンド・イン・ハンドの会」は一時、全国に5000人ほどの会員がいて、自立したAさんのような女性が多く、離婚しても父親と子どもを会わせている人が、全国平均の倍はいた。
先日、久しぶりにハンド・イン・ハンドの会合を開いた。そこに親子ネットという団体からも参加してくれた。この団体は、別居や離婚をしても、親と子が会えるようにということを目的に活動しているのだが、さまざまな理由で、スムーズに子どもと会えないでいる人が多いという。
そもそも日本では離婚すると父か母のどちらかに親権を決めなければいけないが、私は40年前から、離婚後も共同親権であるべきだと提唱してきた。
父と母が遠方に暮らすケース(特に国際結婚など)やDVで別れたケースなど、事情はあるにせよ、原則は北欧のように、子どもが16歳になるまでは近所に住み、経済、教育、精神、物理面あらゆる面で、両方の親のケアを子どもが受けられるようにするのが、親となったものの責任だと思うからである。
親の離婚で子どもたちは傷ついている。その傷を少しでもやわらげるには、子どものせいで離婚したわけでないことを話し、子どもが安らげる波止場をいくつも用意してやることだ。共に暮らせない親や祖父母や従兄姉たちのところに今まで通りいつでも会いに行けることは子どもに安心感を持たせられる。
必死で働いて子どもを育てている親の身になれば、別れた配偶者になつく子を見ると嫉妬心も湧けば、憎悪も生まれるかもしれない。

いくら子どもにはいくつの波止場が必要だと頭でわかっていても決して手放しで喜べないことは、私も当事者だったからよくわかる。それでも、親なら子どもの立場を優先してやるべきではないか。さらに言えば、離婚するに当たって喧嘩を繰り返したとしても許せないという気持になったとしても、「子どもという宝物」をくれた人と思えば、それだけで相手に感謝し、許してもいいはずで、相手やその親族が子どもに会いたいという気持に配慮してもいいと思うのである。

―子どもに関する円より子の著書―
どういう子に育てたいですか(主婦と生活社、1998)
ママの離婚(ちくま文庫、1995)
円テーブルの家族(文化出版局、1983)
子どものための離婚講座(有斐閣選書、1992)
離婚の子どもレポート(フジタ、1985)
子どもが書いた離婚の本(翻訳、コンパニオン出版、1982)
子どもとキャリアどちらもほしい―30代は二度来ない(ミネルヴァ書房、2005)

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離婚と子ども