ツイッターもLINEもYouTubeもなかった1990年代。中学2年生の女の子が私の事務所にやってきました。「円さんなら私の気持をわかってくれると思った」と相談に来たというのです。

お父さんの所に届く「ハンド・イン・ハンド」の会報誌を職場から帰るお父さんより一足先に毎月読んでいるとのこと。その頃、私は、離婚女性の会「ハンド・イン・ハンドの会」を主宰していて、毎月会報誌を出していました。死別母子家庭の人も父子家庭の人も、子どものいない離死別女性など、さまざまな人が会員でした。

「うちはお父さんと二人の家族です。円さん、うちはどうして父子家庭なのか。どうして私のお母さんは私を引き取ってくれなかったんでしょうか。お母さんは私を嫌いだったんでしょうか」

一気に彼女は話しました。私は少し間をおいて「Aちゃんはお父さんと二人の生活が嫌なの?」と聞いてみました。「いやじゃない」どころか「お父さん大好き」と彼女は答えました。ではなぜ、私のところに相談に来たのでしょう。

彼女は小学校6年の時、クラスの友人たちに「Aちゃんの家は父子家庭よね。ふつうは離婚したら、お母さんが子供を引き取るのよ」と言われたそうです。多分、友人たちは自分の家庭で親がそう話しているのを聞いたのでしょう。以来、Aちゃんは大好きなお父さんにも言えず一人悩んでいたらしい。

結婚出産で仕事を辞めざるをえない女性は今も多い。再就職は非正規で収入も少ない。Aちゃんの両親が離婚した頃は、もっと女性が経済的に生き辛い時代でした。

「Aちゃんのお父さんとお母さんはいろんな理由があって別れて暮らすことになったけど、二人ともAちゃんが大好きで、Aちゃんにとってどちらと暮らす方が良いか考えた末、お父さんにしたんだと思う。お母さんは凄く辛かったと思う。Aちゃんを嫌いで手離すなんて絶対ない。きっと会いたいと思っているけど、『母親が引き取るのがふつう』という社会の固定観念が強くて、自分を責めていて会いたいと言えないんだと思う」

そんな話をしたら、Aちゃんはパッと顔を輝かせ、「お母さんに連絡をして会ってもいいのかな」と言いました。その後、父親とも話し、父親の了解も得て、彼女は時々、母親と会っています。

毎年、春夏に親子で合宿を開いて、多くの子どもたちに会ってきましたが、ひとり親家庭は「ふつう」じゃないと思っている子が多かったように思います。最近は多様性を重んじるようになりましたが、多くの人々が「ふつう」にとらわれていて、なかなかそこから抜け出せない。夫と妻に二人の子どもという家族構成はどんどん減少しているのに、未だに政府やメディアはモデル世帯として使ってしまう。そうしたことが「ふつう」を醸成してしまう。

「ふつう」にとらわれない精神が必要です。11月17日(日)14時からの第3回ひとり親家庭の子ども対象「作文コンクール」表彰式では、私円より子が「多様な家族と親子」について語ります。参加費は無料。ぜひお出かけ下さい。

<作文コンクール表彰式>
日時:2019年11月17日(日)14:00~16:10(開場は13:30)
会場:プラザエフ(主婦会館)7F(東京都千代田区六番町15)
アクセス:JR中央線四ツ谷駅 麹町口 徒歩1分
参加費:無料
主催:ひとり親家庭支援プロジェクト実行委員会
連絡先:ひとり親家庭支援プロジェクト実行委員会事務局
TEL:03-6256-9023、E-mail:info@hitorioyakatei-shien.com

ふつうってどういうこと?