アメリカの大統領選、混沌としていますね。これまでの大統領選では毎回、妊娠中絶が大きな論点になってきて、かつて、NHKのクローズアップ現代に出演して、国谷さんと話し合ったこともありますが、今回はトランプか、反トランプかが大問題になってしまいました。ただ、妊娠中絶はやはり根強い問題であり、最高裁判事に妊娠中絶に反対している女性が、つい最近任命されたことはトランプ派を勢いづかせました。9人の判事中、保守派が6人となり、これから長期に渡ってアメリカの女性たちの権利を左右しかねない状況に、多くの反トランプ派は脅威を感じていたようです。

ポーランドでも、胎児の先天性異常を理由とした中絶を認める現行法を憲法裁判所が違憲としました。レイプや母体の危険がある場合は認められますが、中絶の多くが、胎児の先天性異常を理由にしているからです。このため、女性の権利や自由を奪うと、抗議のデモが拡大しています。

日本でも、母体保護法と改名されましたが、優生保護法が中絶をできるようにしていたその理由の中の経済的要因を削除する動きがあり、大反対が起きたことがあります。

誰だって好きで中絶をする人などいない。しかし100%の避妊方法がない中、望まない妊娠をしてしまうことは往々にしてあります。

コロナで仕事や収入が減ったり、店や事業がたちゆかなくなりそうな時、せっかく買ったマンションのローンが払えなくなった時、いや、コロナがなくたって、元々、二人とも非正規雇用で収入にゆとりがなく、子どもを持つのはもう少し貯金をためてからと思っている時。そんな時に妊娠してしまった!嬉しいよりも戸惑いが大きく、妊娠中絶を選ばざるを得ないケースは多いのです。

住宅の狭さ、高い教育費のせいで二人目三人目を中絶するケースもかなり多い。経済的要因を削除されたら、女性の権利や自由だけでなく、男女の人生も狂うかもしれず、この要項はそのまま残りました。でも、女性の罪の意識を増幅する意見は多く、傷をえぐるように水子信仰が流行りました。

未婚の若い女性たちは誰にも相談できず、中絶費用も工面できず、産み捨てて逮捕されたり、出産すると学業が続けられなくなるというケースも相次ぎました。

72時間以内に服用すれば妊娠を防げるという緊急避妊薬があります。これなら、生命が宿る前に阻止できるのだから、中絶のトラウマを抱えないで済むし、妊娠出産で人生を狂わせることもなくなる。もちろん、これとて100%ではありませんが、薬局で安価に誰でも手に入れられれば、どれだけ女性たちが救われるか。

不妊治療を支えることに時の総理が目を向けてくれたことは良いことだと思います。でも、もう一歩進んで、中絶せざるを得ない人たちのことを考え、生み育てやすい環境作りにもっと力を入れてくれたらと思うのです。不妊治療にしても、多胎児出産が多いことを考えると、育児へのサポートがどれほど大切か。

産める環境作りと同時に、生まれた子どもたちが健やかに育つためには親だけでなく、社会の支援が必要で、経済格差、教育格差が起きないようにすることが必要です。養護施設などで暮らす子どもたちの里親制度、養子縁組制度をもっと充実させることも促進すべきではないでしょうか。

子どもを持ってもいいなと思える社会、子どもをみんなで育もうという社会には、共助と公助が重要なことはいうまでもありません。

そして、子どもの笑顔が街にあふれているのは楽しいことだけれど、子どものいる人生だけが全てではないことは当然で、不妊治療促進が、子どものいない人の圧力にならないような配慮が必要なことも言うまでもないことですよね。

大統領選と妊娠中絶問題