2013年11月9日(土)女性のための政治スクール第19期 第1回

講師:萱野稔人氏(津田塾大学教授)×円より子(校長) 対談

演題:「3.11以後の成長と幸福の関係を考える」

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円)安倍政権発足から11か月。今は我が国にとって転機の時期。みんな危機感ない。

「特定秘密保護法案」に対してメディアも反対が弱い。安倍さんに対し物を言ってはいけない、否定してはいけない風潮がある。そこで1つ目のテーマは「特定秘密保護法案」だが、メディアは政府にコントロールされているように思う。

萱野)人々はアベノミクスと給料が上がる期待感がまだあり、これからよくなる期待から悪い話を聞きたくないという市民の反応が強いとメディアもそれに引っ張られる。

円)安倍政権への期待から誰も悪い話は聞きたくない。安倍政権の悪口を言えば矢が飛んでくる。

萱野)「特定秘密保護法案」に関心ない人が多い。経済政策の方に関心を持っている。

2010年に尖閣諸島中国漁船衝突映像流出事件でビデオを流出した事件をベースにして「特定秘密保護法案」が作られている。

円)アメリカの場合、秘密保護法もあるが、秘密指定される範囲が明確で、情報公開が進んでいる。なんでも秘密にされたら、何が秘密なのかもわからなくなる。安倍政権は、「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」(通称「ツワネ原則」安全保障と情報へのアクセス権とを調和させた国際的ガイドライン)を重視すべきだ。諜報活動が合法的になり、秘密指定期間が30年過ぎても解除されなくなる。例えば、北海道警で裏金作りをしていた事件があったが、内部告発者は公安にマークされた。「特定秘密保護法案」が制定されれば彼は拘留されただろう。

萱野)日本は秘密大国。拘留23日過ぎても警察で取り調べを続けていたり、可視化も進んでいない。

円)治安維持法、当初は10年の刑だったが、最終的に死刑ができるようになる。何が抵触するかわからない。誰によって秘密にされているかもわからない。

萱野)日本は人権についてが一番秘密にされている。

円)どんな法案も、法案ができてしまうと拡大解釈されてしまう。大臣の答弁も信用できない。野中官房長官が強制しないと言っていたのに、日の丸、君が代で席を立たないと処罰を受けるようになる。安倍政権が掲げている改憲案は、97条の基本的人権の重要項目が抜かれている。

萱野)知る権利は無条件に認められるべき。これが本来の民主主義の姿。しかし、今、安倍政権が制定しようとしている「特定秘密保護法案」はスタートが違っている。法案の秘密指定は30年を超えても内閣が承認すれば延長でき、半永久的に機密指定を更新できる。民主主義はオープンに判断できることが大事。

円)NPOの運動でも情報が必要。情報が秘密にされて、はたして判断できるのか。

萱野)「決定して従わせる=権力」

決定するには情報が必要。民主主義は十分な情報をもとに議論をして決めるもの。

情報を独占する、すなわち決定者(権力者)。情報の共有化できず、権力者がこれは見せられないと勝手に決めることができる。

円)安倍政権の危さ、きわだっている。「集団的自衛権の憲法解釈問題」、「NHK会長人事介入」等々。

円)参院選挙中にアンケートボードを使って「憲法改正に賛成or反対」のアンケート調査を行った。

テレビに影響を受けている人が多く、朝、報道されていた内容を話す人が多かった。

萱野)第一次安倍政権はメディアで失敗した。そのため、現安倍政権ではメディア対策をしっかりしている。

円)アメリカの経済大変。世界的にも大変だが、世界は日本を救いの神だと思っている。オリンピック招致は最初から決まっていた。日本の経済を発展させ、欧米にお金を出させようとしている。

萱野)アベノミクスは当初、海外からクレームがついていたが、救いの神を守るため、海外からクレームを言われなくなった。世界は様子見をしている。

今までも秘密はあった。縛りもあった(安全保障等)。今まで秘密指定はゼロだったが、今回指定されるようになる。今まで秘密は廃棄されていた。これからの秘密はどう解除されるのか。いま安倍政権が制定しようとしている、「特定秘密保護法案」に対するには、全面反対するのではなく、ルール作りに参加する方がよいのでは。相手のロジックを使いながら、論戦する方が、押し切られるかもしれないが、有効じゃないか。

円)ものわかりがいいと反対ができない。平成11年に制定された「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律」(通称「盗聴法」)電話を勝手に聞くことができる。テロに関わっていると思われている友人とたまたま食事をしただけでも盗聴されてしまう。この法案を審議しているとき、理事だったため、理事懇にでていたが、早く採決しろと言われたが、あの手この手であらゆる手段を使って採決を引き延ばした。

萱野)インターネットは8割がアメリカのサーバーを通過している。すべて見られている。

「米国愛国者法」では、テロ防止のため逮捕するのに捜査令状が必要ない。

円)同様に、誰もがチェックすることができなり、情報に触れると処罰される仕組みができてしまうと例えば辺野古への移転運動に反対もできなくなる。

萱野)「投票の時は王様、終われば奴隷」民主主義はそれではだめ。

円)投票することは民主主義に参加すること。最近は司法の声が、軽視・無視されている。一票の格差しかり。非嫡出子問題しかり。

萱野)司法は元々抑制的だったが、それがかなり大胆に判決を出しても行政が軽視・無視するところまでいったと見なければいけない。

例えば、非嫡出子の問題は25年前から議論変わらない。伝統的な家族制度を守ろうとしている人たち(保守派)が逆に人口減少の要素を創り出している。全くの逆効果。このままでは日本は孤立してしまう。最終的に保守派(自民党・安倍政権)が国益を脅かしている。戦い方として、相手のロジックを使って論戦するほうがいい。現在は保守が保守でなく暴走している。憲法の正当性を失っている。自民党が憲法の価値を下げているが気づいていない。

円)今は社会のスピードが速い。テレビ(メディア)が次々に話題を変えていくことが、かえって記憶の忘却装置になっているのでは。

萱野)今は忙しすぎる。本来、働きすぎ。少子化対策するには、仕事の長時間労働を減らせばいい。

しかし、男女とも24時間働かなければいけなくなっている。本来、「仕事と家庭」両立すべきことが、二者択一になっている。長時間労働が続く限り少子化防げない。しかし、アパレル等では限定正社員を利用する企業が増えてきている。また限定正社員を希望する人たちも増えてきている。家庭持っている主婦は6時間労働、またフレキシブルな雇用等々始まっているが、生産性が上がっている。定着すれば社会が変わってくるかもしれない。

円)オランダ式に時間も仕事も分け合えばいい。

萱野)デフレの根本は、供給過剰なこと。これからは有限性にぶつかるようになるだろう。

最大の有限物は「時間」

 

<質疑応答>

Q)今後の日本が心配。主人を見ていると男性に家族観や女性にたいする教育が必要では。

A)企業のマタハラは2種類あるが、悪気ない場合は無知である。部下の出産を理解する風土をつくるには教育が必要。多くの企業戦士たちが老後、妻たちに依存している。夫も妻からの自立が必要だが、それには教育が必要。

 

Q)長時間労働を減らすには

A)組合の問題もあった。労使協定によって残業時間が決められる。労使交渉では、まず雇用を確保しておきたい、そのため新規採用せず働き手少なくなり、過労死が増えている雇用とは?本来、見直しが必要。

限定正社員を希望している学生多い。企業も限定正社員制度を使っている企業が増えてきているが、見方を変えれば正社員を首にしやすい仕組みとして使われてしまうかもしれない。どんな法案でも裏がある。働いている人が加害者でもある。デフレで物が安く買えるのは生活者としてはいいが、企業の利益とすると利益あげられず、雇用ができない悪循環。急には変わらないが、有限性のあるものをどう使っていくのか。「安くて便利」そろそろ限界にきているのでは。

 

Q)オープンガバメント

安倍政権はお上ありきで、市民を馬鹿にしている。アメリカは基本的に全て情報公開しているが、9つだけ(個人情報等)の日本とは違う。「有限=時間」だとすると、一番時間を無駄にしているのは政治なのでは。

A)  日本のオープン度際立って低い。情報は自分たちが決めるための判断材料。情報がなくなれば、クレームが残るだけ。

 

Q)日本は物事を考える力を培っていないのでは。テレビの話をおうむ返しする人が多い。子供のころから自分の考えをもつことができていない。権力が悪さすることを知らずに進学し、就職する人が多い。

A)  日本はアウトプットする教育が遅れている。フランスは小学生のころから、小論文をやっている。日本は感想文程度。方法論が決まっている。子供のころから批評させる訓練をしている。アウトプットが苦手な日本人はルールメイキング力が弱い。欧米はアウトプットする力を持っているから、ルールメイキングができる。日本の入試はインプット中心。いま自分が教えている津田塾ではアウトプット能力と意識が大事だと教えている。どれだけインプットしてもアウトプットできなければ意味がない。政府は英語力が上がることを推奨しているが、英語力があがった優秀な人材が海外に流出してしまうことに繋がる場合もある。本来の保守ではないのでは、いいのか。すべての解は正当と異端の間にある。知的従順性をなくしていきたい。

 

Q)「選挙民主主義」日本の場合、一個人の意見が通らないのでは。フェアなのか。

A)「一票の格差」高齢者に向けた政策が多く、若者に向けた政策になりづらい。負担を平等していくには、若者に向けた政策をつくっていくことが循環型社会に結びつくのでは。

投票ができる年齢を18才に下げた方がいい。18才であれば、高校生の頃に投票できる場合もある。高校生であれば親元にいる可能性が高く、家族で話し合いができる機会を持てる可能性がある。若者が政治に興味を持つきっかけになるかもしれない。

2013年11月9日 萱野稔人さん(津田塾大学教授)「3.11以後の成長と幸福の関係を考える」~女性のための政治スクール第19期第1回対談~