クリステルは自分の家は母が田舎から来て寝室がふさがっているからと友人マルガレータの家を紹介してくれました。
私は、翌日のコペンハーゲンでの取材を終え、かなりドキドキしながら夜の列車でストックホルムに向ったのです。

そして中央駅からタクシーに乗り、電話で聞いていた住所を告げる。
「多分、ここだと思うよ」
タクシーの停まった古いレンガ造りの4階建てのアパートの前で降りると、4階の窓から女性が身を乗り出し「YORIKO?」と叫びました。

4階に上ると、マルガレータとサラが出迎えてくれ、居間でお茶。
「今日は遅いから明日ゆっくり話しましょう。この家はね、仲間とシェアして住んでるの。」
と教えてくれ、「あなたの部屋をシェアしている女性は南欧へ2週間旅しているから、ゆっくり使っていいのよ。明日、取材に出るなら、夕方、みんな集まった時にメンバーを紹介するわ。」
マルガレータは細身の背の高い40歳くらいの女性で、無駄口はたたかず初めて会ったにもかかわらず、頭のいい信頼できそうな感じでした。
私は安心してシャワーを浴び、さっぱりと気持ちのいい、16畳くらいの寝室ですぐに眠りにつきました。
翌朝目がさめて、一瞬自分がどこにいるのかとまどった私。ああ、昨夜遅く、このシェアハウスに着いたんだ。
時計は8時、でもほとんど物音がしない。朝食を囲む声とか準備の音とかすれば出ていこうと思うのに、そういう気配がない。喉が渇いているのに気づき、部屋を出て、キッチンかなと思う方向に行くと、ウワッ、びっくり。

そのキッチンのテーブルに、このシェアハウスを紹介してくれたSASの機内の隣席に坐っていたクリステルがいたんです。それも2歳くらいの男の子にポリッジを食べさせながら。

目を白黒させている私に「お早う。よく眠れた?」と彼。
「あなたもここに住んでいるの?」
「違うよ、だけど昨日から来てたんだ。ただ疲れてたから先に寝てたんだよ」
「マルガレータは?」
「もう放送局へ出勤したよ。コーヒー飲まない?そこにあるよ。ミルクがよければ冷蔵庫。ヨーグルト、チーズ、パン、適当に食べてね」

2歳くらいの子は彼の子で、離婚した妻がひきとっているが、クリスマス休暇でロンドンに行っているとのこと。
コーヒーを飲んで話しているうちにマルガレータと彼は恋人らしいこともわかってきました。

この古いアパートの4階フラットがすべてマルガレータたちのシェアハウス。玄関は広く8畳くらいで、20畳くらいの居間と隣に16畳くらいの食堂、そしてクリステルとコーヒーを飲んだキッチン。そこにも小さなテーブルと4つくらい椅子があって、朝はそれぞれそこで簡単に食べてい
くらしい。他にバスルーム、シャワールーム、トイレが各2つ。後は個室が5つ。

放送局に勤めているマルガレータに彼女の二人の息子、20代の若夫婦、もうすぐ子どもの産まれる女性、会社員の女性の7人がシェアハウスのメンバーで、買い物、夕食作り、共有部分の掃除などの分担が決められ、個人の生活優先ながら、互いに助けあい、住居費・生活費は節約できるし「快適なくらし方よ」とのこと。

働きながら子どもを一人で育てるには、シェアハウスの仲間の支えが大きかったとマルガレータ。また、シングルマザーになる女性も、「みんながいるから不安はないわ」と。

30年近く前のことですが、母子家庭に向いている擬似家族の住まい方だと思いました。

第27回はここまで。
次回3月5日の「北欧との出会い」⑨
「vol.28 日本ではムリ?」に続きます。

vol.27 『北欧との出会い』 ⑧「シェアハウス」