1ドル360円の時に北欧へ取材旅行をして以来、何度か北欧を訪ねましたが、16歳で子どもを産んだ後、職業訓練を経て娘と自立して暮らしているシングルマザーに会いました。日本では10代で妊娠すると中絶させるか、出産すれば高校を辞めさせるので自立はおぼつかなくなります。

職業訓練を受けているシングルマザーと子ども

本当に子どもが大事というなら、10代のシングルマザーが高校を卒業でき、自立できるよう職業訓練を受け就職するまでの支援をしたほうがいい。ところが「ふしだらだ」と言わんばかりに支援どころか差別するのが我が国です。

産まれた子にも「非嫡出子」という烙印を押します。住民票には長男長女ではなく、単に「子」と書かれていたんです。これはおかしい、子どもに罪はないのだから、住民票での差別(※1)をなくそうという運動をおこし、国会でも追及したせいでようやく改正されました。

ところが非嫡出子と嫡出子間の相続には差別がまだ残っています。国会議員になってすぐ、この問題にもとりくみました。

新進党(※2)の時ですが、法務関係の部会長をしていて、夫婦別姓とこの非嫡出子差別について意見をまとめる立場にあった時のことです。新進党で民法改正の議員立法を出すことになったのですが、まず法務部会の賛成を経て、総務会の了承を得るという手続きが必要でした。

ところが、毎週有識者や一般の人たちの意見を聞き、議員で話し合っても決まらない。40人ほどの部会メンバーのうち2人がどうしても反対だったんです。多数決で決めても良かったのですが、この2人は部会長の私より議員歴も長く、党に対して影響力があるので、法務部会は通っても総務会で了承されない懸念がありました。

そこで手分けして、総務会のメンバーや党執行部の人たちに、「民法改正」に対する意向を探ることにしました。私は二階俊博さん(今は自民党)や小沢一郎さん(今は生活の党)らに話しに行きました。二階さんは「夫婦別姓は賛成。私だけでなく知りあいに娘しかいない人が多くてね。みんな娘には自分の姓をついでほしいと思っているから」と話され、非嫡出子差別についても理解がありました。

小沢さんは「私は賛成だよ。なんで法務部会でもめているの。人間の生き方は自己責任だからね。姓についても、法律婚を選ぶか選ばないかについても自分で決めればいいんだよ。それを法律で不利益をこうむらせるような形にするのはよくない」と言われ、「いったい誰が反対してるの。俺が話してやるよ」

小沢さんが民法改正に賛成してくれたのも予想外で驚きましたが、さらに驚いたのは小沢さんが話してくれたとたん「円さんにこれ以上嫌われたくないから、議員立法出すことは賛成しますよ。私自身の民法改正反対は変らないけどね」と、ずっと猛反対していた先輩議員が言ったことでした。小沢さんの影響力ってすごいんだなあと思いました。
ただし、小沢さんは私に言ったんです。

「円さん、多くの女性は責任を自分でとる生き方を本当に良しとしているとは自分は思えないんだけどね」と。

第29回はここまで。
次回3月19日の「北欧との出会い」⑪
「vol.30 ピルとバイアグラ」に続きます。

<脚注>
※1 住民票での差別
法律上の婚姻関係にある男女の間に生まれた子を嫡出子といい、そうでない子を非嫡出子という。
現在の民法では嫡出子と非嫡出子の法的地位には差別があり、非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1とされている。また戸籍では嫡出子は「長男・長女…」と記載されるのに対し、非嫡出子は「男・女」と記載されるという表記上の区別がある。
以前住民票では嫡出子は「長男・長女…」、非嫡出子は「子」とだけ記載されていたが、1995年3月1日から、住民票に関しては、子の続柄は実子・養子・嫡出子・非嫡出子すべて「子」に統一された。

※2 新進党
細川護熙政権の中核をになった新生党、公明党、民社党、日本新党などが合同して出来た政党。1994~1997年。小沢一郎と羽田孜グループの確執で党内に回復しがたい亀裂を生じ、旧公明党勢力の離脱をきっかけに崩壊する。

vol.29 『北欧との出会い』 ⑩「子どもの差別」