私の暮らすマンションの前には小さな遊歩道がある。そこに10本の桜の木が植わっている。つい5日前、まだすべてがつぼみだったのに、出張から戻ったら満開の桜が強風と雨でハラハラと揺れ、ベランダにまで花びらが舞っていた。

部屋の窓からも見えるこの桜が気に入って居を移したのだが、何と儚い命だろうか。でも、また次の年も人の心をときめかせる花を咲かせるのだから、儚いとは言えない。

このところ、大切な人々が突然亡くなり、ショックが大きい。

先日など、長野までお通夜にとんでいった。11月から胃がんで入院していたが、手術で開腹した時にはあちこちに転移していて、結局、手術はできなかったという。

その人は12月には蜜入りのおいしい信州りんごをいつものように送ってくれたので、まさかそんな症状で入院しているなど思いもしなかった。

「円さんを当選させたい。女性たちのためにがんばってほしいって、最後まで気にしていたのよ」と聞いた。
「あんまり、円さんのことばかり話すから来てもらったらと言ったんだけど、みっともない姿を見せたくないって」

彼女は私が主宰している「女性のための政治スクール」(一年単位)に何年もリピーターになって長野から通ってくれた人だ。そして長野ではよく私を呼んで会合で話をさせてくれた。選挙のたびに東京まで応援に来てくれた。出しゃばらず、いつも控えめで、人の話をよく聞き、黒子に徹して働く人だったから、誰からも頼りにされていた。自分のことはいつも後回しで、痛いとか辛いとか苦しいとか大変だとかを言う人ではなかった。

だからきっとがんが進行していても我慢してしまったのだろう。

落選している私を気づかって「時間があればいつでも来てね、一緒に温泉に行って少しのんびりしたほうがいいよ」と言っていた。
「うん、行くね」と言ったまま、約束は果たせなくなった。

妻を亡くしてとても辛いはずのご主人は通夜の席で私に言うのだ。
「落選してるときついだろうが、志を持って始めたことだ。がんばって再選するんだよ」―こういう人たちに支えられている私。涙がとまらなかった。

第73回はここまで。
次回は4月15日に。

vol.73 「長野の友人の死」