ひとり親家庭の母親が、必死で働いて二人の幼い子を育てていた。預かってくれる人を探すのにネットの紹介サイトを利用。

そして2才の長男を亡くし、ゼロ才の次男は低体温症で入院中。何が起きたのか、事件の全容はまだ明らかになっていない。

はっきりしているのは、どれほど母親が、子どもを守れなかった自分を責め苦しみ、悲しんでいるかということだ。

そして、今、待機児童問題に象徴されるように、働く母親と子どもを取りまく状況は、もう放置しておくわけにいかないところまできていることだ。

平日の昼間だけ働いている人ばかりではない。夜間や土日に働かざるをえない人は多い。

また、正社員だけでなく、非正規と言われる、契約社員、派遣、アルバイト、パートが増加しているが、その非正規の7割は女性であり、不安定な雇用と低収入に甘んじている現状がある。

ひとり親家庭の母親の場合、子どもがいることで就職先は極端に狭められ、正社員になるのは困難で、子どもが心配でも夜間や土日に働かざるをえないケースが多い。

それなのに、夜間に開いている公立の保育所は全国でも81ヵ所しかない。

勢いネットの紹介サイトでベビーシッターを頼むしかないということにもなる。

何十年も前のことだが、私たちの子どもの時代は、商売で忙しい家庭の子どもが、隣の家で夕飯を食べることはよくあることだったし、ひとり親家庭で運動会に親が働いていて来られなくても、近所のみんなで何人分も弁当を作って、一緒に食べ応援し、親代りにパン食い競争をしてくれるおじさんがいたものだった。

働きに行く母親を困らせて泣いている子がいれば隣からも向いからも出てきて「お母さんを困らせちゃいけない。うちで遊んでなさい」と言ってくれた。

地域で子育てをしていたそんな時代は遠くなった。

今、誰もが孤立して子育てをしている。私の世代は働く娘のために孫の世話をしている人も多いし、孫のために教育資金を贈与する人もいる。

しかしそういう恵まれた人ばかりではなく、親もいず、いても助けられる状況になく、行政の情報からも縁遠く、ネットだけが頼りの人もいるのだ。そのネットの中でも低料金のところにしか頼めない人も多い。高いほうがより安心かもしれないと思いはしても。

所在も素性も分からない人間に子どもの命を預けるリスクを考えることはもちろん親として当然のことだが、そのゆとりさえない状況に低収入や不安定な雇用の人は追い込まれやすいことも理解しなければいけない。

夜間保育を増やし、ベビーシッターの質を上げるだけでなく、できるだけ母親を孤立させないよう、出産後も保健師や助産師が訪ね、赤ちゃんと母親を地域につなぐような取り組みを活発化するなど、子育てに優しい社会づくりを早急に進めるべきだろう。

(追伸)私の子育てを書いた「どういう子に育てたいですか」(主婦と生活社 1998年)を読んでいただけると嬉しい。

vol.74 『子どもを育てるということ』① 「ネットベビーシッター事件」