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平成17年9月29日(木曜日)
参議院本会議における円より子代表質問
民主党・新緑風会の円より子でございます。会派を代表し、小泉総理の所信表明演説に対する代表質問を行います。
さきの総選挙で、我が民主党は残念ながら議席を激減させ、与党に三分の二以上の絶対安定多数を許してしまいました。改革を政治の目的と履き違えた小泉自民党とは違い、私たち民主党は、国民の命と暮らしを守るための真の構造改革を目指す党でありましたのに、郵政民営化法案で抵抗勢力のように誤解されてしまいました。
しかしながら、二千四百八十万人の人々が支持をしてくれたのです。それは、現在の生活に満足していないという四〇%もの人々や、働きたくても職場のない若者たち、子供を持つことをためらう団塊ジュニアの三十代、リストラされ、勤めていた会社が倒産し自殺を考えた、また自殺をしてしまった人たちの家族、こつこつまじめに働いて商売をしてきたのに銀行の貸し渋りや貸しはがしで商売を続けられなくなった人たち、そういう人たちの夢と信頼をかち得たからだと自負しております。
さらに、野党すべての小選挙区の得票数は三千四百五十万票であり、自公両党の三千三百五十万票を実に上回っています。これは一体何を物語っているのでしょうか。中選挙区制とは異なり、小選挙区制度の妙味によって議席数が三分の二以上になっただけであって、大勝したとか完勝だとかおっしゃるのは国民を見ていないことになります。国民は、小泉自民党に絶対安定多数の三分の二以上を許すつもりはありませんでした。それが国民の半数が反対票を投じたことに表れているのです。この国民の真意についてどのようにお考えになりますか。
国民は今、表面的な大勝に浮かれている与党が、絶対安定多数をかさに着て、どんな法案も通せるとか、改憲でも増税でもできないことはないという状況になったことに大変な懸念を持っております。この懸念を必ず吹き飛ばすことを私たち民主党は国民の皆様にお約束したい。また、おごれる者は久しからずという言葉どおり、勝ち過ぎた者はいずれ必ず負けるのです。これは歴史が証明しております。
私たちは小泉自民党が実力で勝ったとは思っておりません。総理は、こうした民意を冷徹にくみ上げ、国民の半数は、与党による国益に反する郵政民営化法案にも、四年間国民に痛みを押し付けただけの総理のえせ改革にも、全面的に賛同したわけではないことをしっかりと脳裏に刻み込み、残り一年の任期を今度こそ国民のために働かれることを望みたいと思います。
まず、総理の郵政改革の考え方について伺いたいと思います。私には、総理が、アメリカの国益は優先しても我が国の国民の安全、安心や国益を優先しておられるとはとても思えないからです。
総理は先日の所信表明演説でもその大半を郵政民営化法案に費やされました。この欠陥のある郵政民営化法案に対し、国民の財産を守るためにどうしても譲れないことを、既に国会でも我が民主党の同僚議員が何度も追及したことではありますが、再度ただしておきたいと思います。
郵便貯金と簡易保険を合わせて三百五十兆円がこの法案の成立によって真に国民に役立つように活用されるのかどうか、その問題であります。この三百五十兆円の金融資産は、日本国民が額に汗してためた大切な財産です。
これらの膨大な資金について、竹中大臣は次のように言われています。郵便貯金銀行と郵便保険会社の株式は、民営化された後は十年以内に持ち株会社の日本郵政株式会社からすべて放出されて、その株式は自由にだれでも、これは外資でもということでございますが、買えるようになると。
民営化した後にできる日本郵政株式会社という持ち株会社が株式上場されたとき、これをいわゆるハゲタカファンドがどれだけ買えるか、あるいは外国資本が二〇%以上は買うことができないような歯止めを法律で掛けるかどうかがそこで大変重要になってきます。ところが、これに歯止め、つまり法的規制を掛ける議論は一切総理はなさろうとしなかった。これは大変危険なものをはらんでおります。これでは日本郵政株式会社の株式が無制限に外資に取得される可能性が高くなる懸念があるからです。
総理は、アメリカの言うことなら即座に支持するとの姿勢を常に取られるようですが、そのアメリカでは、郵政事業は国民のためのパブリックサービスであると同時に、国防にもかかわる基本的な事業であるととらえ、民間企業や外国資本による株式の取得を制限するように法的規制を掛けております。このことを御存じないわけはありますまい。
アメリカも掛けているこの法的規制だけはどんなことがあってもやっていただきたい。私は、国民の汗の結晶である最後の三百五十兆円を国民のために守る義務が、そして責任が総理にはあると思います。必ず国民のためにこれはやると確約を総理はすべきだと思います。その決意を伺いたい。
次にお聞きしたいのは、国民の安全と安心の大きな基盤、財政再建についてです。国民は今、我が国の財政状況について深刻な危機感を持っております。
我が国の財政は、バブル崩壊以降の累次の経済対策による歳出の拡大に加えて、度重なる減税や景気の低迷による大幅な税収減によって国と地方の長期債務残高が加速度的に累増し、その残高は、財務省の発表では、今年六月末現在、七百九十六兆円に達しました。今や主要先進国中最悪であり、正に破綻寸前の状況にございます。そして、国民の皆さんはこの事実を御存じでしょうか。何と、このうちの三分の一の二百六十一兆円は、改革を進めているはずの小泉内閣がつくった借金なのです。
財政赤字や債務残高の拡大により財政に対する国民や市場の信認が低下すれば、長期金利の上昇を通じて、回復過程にある景気に重大な悪影響を及ぼします。このような中で、財政破綻を回避し、将来にわたり持続可能な財政を構築していく道筋を示すことこそが国民の安心につながるのではないでしょうか。
そこで、総理に伺います。
総理は、所信表明演説において、二〇一〇年代初頭に政策的な支出を新たな借金に頼らずその年度の税収等で賄えるようにする、プライマリーバランスの黒字化による財政構造改革に取り組むと改めて述べられました。しかし、演説では、その達成に向けた具体的な道筋を何ら明らかにされておりません。
しかも、しかも内閣府は、改革が進展すれば本格的な消費税の引上げを行わなくても二〇一二年にプライマリーバランスが黒字化できると極めて楽観的な見通しを示し、財務省は消費税の二けたへの引上げは不可避であるとの全く逆の悲観的な見通しを示しています。今後の財政再建に関する政府部内の問題意識がこんなにばらばらでいいのでしょうか。
また、二〇一〇年代初頭にプライマリーバランスを黒字化できるとしても、これはあくまでも国と地方を合わせた財政収支であり、国は依然として大幅なプライマリー赤字であることは明らかです。したがって、プライマリーバランスが黒字化した後の財政再建目標、とりわけ国の財政再建目標が今後の重大な政策課題になります。
平成九年に導入された財政構造改革法は、金融危機や景気失速のあおりで凍結され、今なおたなざらしにされているのです。これに代わる新たな財政再建目標を早急に策定することにより、財政に大枠をはめるとともに、個別分野ごとの歳出削減目標を定め、聖域なき歳出改革を積極的に進めていくべきと考えますが、総理の見解をお伺いいたします。
あわせて、財政再建のためには、国の一般会計の歳出改革だけでなく、各省庁の独自財源として聖域化され、巨額な無駄遣いの温床ともなっている国の三十一すべての特別会計をゼロベースで見直して、事業の廃止や民営化を含めた抜本的な改革を行うべきではないでしょうか。この点についても総理の答弁をお伺いいたします。
さて、小泉総理はこれまでほとんど通貨の問題について言及されていないように思いますが、通貨は国民の安全、安心にかかわる重要問題です。
近年、円を取り巻く環境に内外で大きな変化が見られ、円の国際通貨としての役割を推進しようという議論が活発に行われています。
長年にわたる欧州の悲願の結果として、国際通貨、金融資本市場に登場した国際通貨ユーロは、これまでの米ドル一極体制に変化を迫る可能性を秘めております。
このユーロ誕生を目前にして新たな国際通貨体制を模索する動きが出始めていた中、一九九七年七月のタイ・バーツ切下げに端を発したアジア通貨危機は、その発生原因の一つが米ドルに過度にリンクしたアジア諸国の通貨システムであったこともあり、新たな国際通貨システム模索への議論をより加速させる結果となりました。
既に新たな国際通貨システムへの一歩として、欧州でのユーロの誕生以外にも、米州においては、例えばアルゼンチンにおけるドル化といった動きも見られます。
こうした流れの中でアジアとして打ち出していくべき道は、よりアジア各国と経済的な結び付きが強く、経済的規模も大きい日本を中心とした通貨システム、例えば日本円の比重を増した通貨バスケットシステム等を築いていくことではないでしょうか。
といいますのも、世界ではアメリカによるグローバルスタンダードと呼ばれる価値観が広まり、ヨーロッパではEUの統合が着実に進展していますが、欧米とは異なる考え方や価値観を持つアジアにおいては、アジアにふさわしいやり方で、お互いの協力関係を強化し、人的交流を深め、関税などの通商障壁を撤廃し、投資に関するルールや経済社会制度の調和を進めていく必要があると考えるからです。
日本が円の国際化に伴う国際的責任を分担し、円の国際化を推進していくことは、アジアの発展、国際通貨体制の安定に寄与することになり、ひいては日本の安定的な成長につながります。
石油だけでなく、通貨がイラク戦争を起こしたと専門家の間では既に言われており、我が国も通貨とエネルギーに関してしっかりとした戦略を持つ必要があります。総理に戦略はあるのか、通貨について総理のお考えを伺います。
次に、これも国民の大きな安全、安心の一つ、防災対策について質問します。
我が国の防災対策を見ますと、震災対策、津波対策、風水害対策、火山被害対策など、個別の対策にはそれなりの進展が見られます。また、この七月には最近の災害を教訓として、国の中央防災会議は防災基本計画を修正し、地震防災戦略、津波対策、集中豪雨時等における情報伝達の改善及び高齢者等の避難への支援、洪水ハザードマップの活用推進等による洪水・土砂災害対策などについて、その強化を図ることといたしました。
しかしながら、これらの対策はいずれも対症療法的と言わざるを得ません。なぜなら、災害を未然に防止し、拡大させない国土づくりや都市づくりという観点が根本的に政府の対策には欠けているからです。
国土の均衡ある発展という名において、美しく、また災害に対する抵抗力を元来備えている森林等の自然を破壊し、ダムや道路あるいは人工林で国土を画一的に覆い尽くそうという政策等は何ら変わっていないからです。こうした政策にもかかわらず、山間地等における過疎化は止まらず、高齢者のみでコミュニティーを支えざるを得なくなり、災害時の避難も思うに任せなくなっています。
都市部においても、規制緩和の名において、小泉政権は土地利用規制を形骸化させ、無秩序な土地利用が進みました。また、緩い容積率、斜線規制等を目一杯利用した建物の建築により、町の美観が損なわれるだけでなく、防災という面では大変脆弱になっています。近年多発している都市直下型地震や都市部でのゲリラ型豪雨に対する対応は極めて不十分なものと言わざるを得ません。
そこで、この際、より根本的な防災対策として、災害を未然に防止し、拡大させない国土づくりへと政策の方向を転換すべきと考えます。
具体的には、いまだに日本列島改造の発想から抜け切れていない工業再配置法を始めとする地域開発立法を全面的に見直すことが必要です。また、水害防止、地球温暖化防止といった森林の公益的機能を早急に再生させるため、治山治水事業を隠れみのとした環境破壊型の公共事業を縮減し、環境と緑を守る持続可能な公共事業、すなわち緑のダム事業へと転換するべきだと考えます。
都市づくりにおいても、計画なくして土地利用なし、建築なしの原則を確立するため、建築基準法を単体規制に特化させ、都市計画法をあまねくすべての地域を対象とするまちづくり法へと大胆に改変するとともに、地域コミュニティーの自立、再生、充実を図るまちづくりの基本原則を明記した景観・まちづくり基本法を制定する必要があるのではないでしょうか。
防災対策としての国土づくり、都市づくりなしに国民の安全、安心をうたう総理の見識を疑いたくなるのですが、総理の見解はいかがでしょうか。
さて、最も重要なのは、世界の中の日本についての総理の認識とその対応です。
総理のこの間の行動を見ますと、向米一辺倒で、それだけで我が国の国際的な平和と安定を維持できるとお考えのように見えます。
総理は、我が国の安全と繁栄には世界の平和と安定が欠かせないとおっしゃいますが、残念ながらその外交には総合的戦略が欠けております。今の我が国にとって必要なのは、長期的、総合的な外交戦略です。そのためにどのような布石を打つべきか。
第一は、当然、日米同盟の強いきずなを維持すること。しかし、過剰なアメリカ追随はアジア諸国との友好を妨げます。というのは、第二の布石は東アジアにおける日本の貢献であり、そのためには中国、韓国との友好な関係を築くことこそが我が国の平和と安定にとって大変重要だからです。第三は、国際社会の一員としての存在を示すことです。この三つのバランスが外交には重要ですのに、総理は全く国益に反することをやっておられると皆さん思われませんでしょうか。
中国が日本の常任理事国入りに厳しい姿勢を取ることが分かっていたのに、総理は殊更に靖国問題で日中間に荒波を立て、国際社会に戦後六十年たっても隣人と仲良くできない国に常任理事国が務まるのかという疑念をかき立てました。国連改革への参画、安保理常任理事国入りも大切ですが、まずは近隣諸国との信頼関係を確かなものにしていくことが先決ではないでしょうか。
中国とは首脳同士の相互交流が途絶えています。韓国とは竹島問題や歴史認識問題でぎくしゃくした関係が続き、日韓国交正常化四十周年の事業も盛り上がりを欠いています。小泉総理は、自ら種をまいた靖国問題と日中、日韓関係の修復、アジア外交の立て直しを速やかに実行に移すべきではないか。
東シナ海の海洋資源をめぐる日中間のあつれきも重大な岐路に差し掛かっています。ガス田の操業を始め既成事実を重ねる中国側の姿勢は容認するわけにいきませんが、この問題を日中の対抗意識のぶつかり合いに陥らせてはなりません。海洋資源が日中双方合意の下で開発、生産され、日本企業が多数進出している中国沿海部のエネルギー需要を賄えば、双方の利益となります。我が国の資源エネルギー源の多様化と安定供給の確保に資する観点からも、政府は中国との協議に臨むに当たり知恵をもっと出すべきではないでしょうか。
次に、自衛隊の海外派遣について伺います。
小泉総理は、テロとの闘いを標榜し、アフガニスタン戦争に伴う海上自衛隊によるインド洋での洋上補給活動という戦時派遣に踏み込み、また、イラク戦争に際して、人道復興支援の名の下に陸上自衛隊のイラク派遣という戦地派遣の扉を開きました。何事も進むのはたやすく、引き際のタイミングをとらえることは難しい。
十一月一日に期限の迫るテロ対策特措法の再延長を取りやめ、洋上給油の需要が乏しくなったインド洋から海上自衛隊を速やかに撤収させるお考えはないか、総理の見解を伺います。
そもそも、四年前にできたテロ特措法は、九・一一に関するものであり、二年間の時限立法だったはず。それを二年間延長し、更に二度目の延長もしようというこの不自然さをどう考えておられるのか、伺いたいと思います。
イラクでは、イラク戦争の開戦理由とされた大量破壊兵器は結局発見されず、テロと掃討作戦という暴力の連鎖は、正に内戦とも形容すべき深刻な状況です。民主党は、派遣自衛隊は十二月までに撤退させ、日本にふさわしい復興支援に取り組むと主張してきました。十二月十四日の自衛隊の派遣期限の再延長を国会閉会後に強行されるようですが、それは国会論議を封じることであり、自衛隊に対する政治のコントロール、シビリアンコントロールの責任をなげうつことになってしまいはしませんか。
イラクの治安状況を見れば、非戦闘地域への派遣という政府の説明は既に崩壊しております。サマワに派遣された自衛隊に対する度重なる攻撃の現実を見据えれば、撤退の決定を先延ばしすべきではありません。総理の御認識を伺います。
次に、在日米軍再編問題に関してお聞きします。
日米間の調整に基づいての中間報告が間もなく十月中にも出されると言われていますが、果たしてそれは事実なのかどうか。あるいは、タイムリミットは十一月にも開かれる見通しの日米首脳会談までずれ込むのかどうか、その見通しについてまず明らかにしていただきたい。
更に踏み込めば、再編問題に対してそもそも日米に認識の違いがあります。総理はいかがお考えか。ハイテク技術を駆使すればいつでもどこでも対処できるため、前方に軍を常駐させることはもはや不要となっておりますが、しかしながら、アメリカはアジア太平洋地域においての抑止力を低下させようとはそもそも考えておりません。いわゆる不安定の弧に対処するため、現にアメリカはインドやパキスタンと盛んに接触しているではありませんか。また今後、日本単独の有事もないとアメリカは見ています。つまり、日米安保は変質し、日本を守るという目的からアジア太平洋地域の平和と安定をともに守っていきたいと考えていると思われます。
そうした戦略環境の変化に対応しようという米軍の再編を日本は基地問題ととらえてしまい、アーミテージ氏に、日本には理念から入るべきだったと言わしめたと聞きます。こうした米軍再編成の認識について議論すること、また、この日米の認識の違いを国民に知らせることがまず必要だとお考えになりませんか。
もちろん、国民にとって、特に沖縄県民にとって基地問題は重要です。米軍の再編に合わせて基地の海外移転を図りたいというのは当然のことです。しかし、日米に認識の差があることから、既にSACO合意から十年近くの月日が経過しているにもかかわらず、普天間返還は暗礁に乗り上げております。仮に十一月の日米首脳会談でも決着が得られなかった場合には総理の政治責任という問題が起きます。国民の安全、安心とは口先だけなのでしょうか、リーダーシップを取るお考えはないのか、重ねて明確な答弁を求めます。
さて、打ち合わせたわけではないんですが、昨日、我が民主党の鳩山由紀夫幹事長も、衆議院における代表質問の中で、二・二六事件後の昭和十一年五月七日、第六十九議会における斎藤隆夫のいわゆる粛軍演説に言及されました。
私は、私事で恐縮ですが、一昨年に上梓した拙著「一人でも変えられる」の本の中に彼のことを書いており、尊敬する政治家の一人でございますので、文語口調ではありますが、まるで今の時代を映しているその演説内容をしばらく引用することをお許し願いたいと思います。
まず第一は革新政治の内容に関することでありまするが、一体近ごろの日本は革新論及び革新運動の流行時代であります。革新を唱えない者は経世家ではない、思想家ではない、愛国者でもなければ憂国者でもないように思われているのでありまするが、しからば進んで何を革新せんとするのであるか、どういう革新を行わんとするのであるかといえば、ほとんど茫漠として捕捉することはできない。言論をもって革新を叫ぶ者あり、文章によって革新を鼓吹する者あり、甚だしきに至っては暴力によって革新を断行せんとする者もありまするが、彼らの中において、真に世界の大勢を達観し、国家内外の実情を認識して、たとえ一つたりとも理論あり、根底あり、実行性あるところの革新案を提供したる者あるかというと、私は今日に至るまでこれを見いだすことができないのである。国家改造を唱えるが、いかに国家を改造せんとするのであるか、昭和維新などということを唱えるが、いかにして維新の大業を果たさんとするのであるか。しかも、この種類の無責任にして矯激なる言論が、ややもすれば思慮浅薄なる一部の人々を刺激して、ここにもかしこにも不穏の計画を醸成し、不逞の凶漢を出すに至っては、実に文明国民の恥辱であり、かつ醜態であるのであります。
文語調でございましたが、皆様はお分かりいただけましたでしょうか。この斎藤隆夫が演説を行った時代から実に七十年もの時が流れております。しかしながら、この革新、つまり改革に浮かれた時代状況は今と全く変わらないと思われませんか。当時も、革新と世の中すべてが叫んではいても、いかにしてそれを実現するか全く明らかにされていない。そして、それは小泉総理の言う改革とも共通します。
改革なくして成長なし、改革を止めるな、改革なくして明日はないといった元気な言辞を頻繁に弄した名アジテーター小泉総理に乗せられ、改革とさえ叫べばすべてがうまくいくかのような幻想に陥ってしまった人々が多くいます。
しかし、この四年間、年金の不安は消えたでしょうか。子供の出生は増えたでしょうか。自殺は減りましたか。小学校の子供たちまでが教師を襲い、親の子供への虐待は増え続けています。この世の中がとても良くなっているとは思えません。世界を見ても、うまくいっているように見える日米関係はBSE問題や基地問題などがあり、アジアでは、中国からも韓国からも尊敬されるどころか、両国との友好関係が瓦解しそうであることは既に申し上げたとおりです。
小泉総理、あなたは改革を叫んで一体どういう社会をつくりたいのですか。あなたの改革とは何なのでしょう。あなたは改革をあたかも正義であるかのように人々を鼓舞しておりますが、改革は正義ではありません。目的ではありません。手段にしかすぎないのです。
人を幻想に陥れる天才とでもいうべき総理がやりたい改革は、よもや海外で武力行使ができる国に日本をすることではありますまい。何も説明をせず、弾道ミサイル防衛に多額の予算をつぎ込んでアメリカと協力すれば、中国や韓国やアジア諸国から危険な国と見られるのは必至です。日本の高度な省エネ技術や物づくり技術をODAに生かして世界の国の尊敬と信頼を得るよりも、分担金の額が多いのだから安保理の常任理事国になるのは当然だと主張すれば、キリスト教圏の人から見れば、札束で人の顔を張るような、ならず者国家のように映ります。
総理が小さな政府を志向したサッチャーさんの改革を範とするのはよしとしても、市場原理のみを追求し、社会的弱者となってしまった人たちを放置すれば、それはサッチャーさんの改革の片面だけを追うことになり、政治家としての責務を果たしたことにはなりません。
さらに、人生いろいろ、会社もいろいろ発言は、この国の人々のモラールを一気に低下させました。この責任をどうお取りになりますでしょうか。
御自身の厚生年金について追及されたときもそうです。親身に政治家小泉を育てようと言ってくれる人がいて、働いてもいないのにそういう資格を取ってもらえた。しかし、そういう恩恵を受けられない人々が多数であることを考えれば自分は恵まれ過ぎている。申し訳ないから厚生年金の資格を返上します。例えばこのように謝られれば、国民のモラールの低下は食い止められたかもしれません。しかし、にやにやとお笑いになって、人生いろいろ、会社もいろいろと発言なさいましたから、国民年金の未納は広がる一方です。
人生いろいろとは、人生いろいろとは、この言葉は苦境にある人に励ましの言葉としてこそ言うべきもので、恵まれた人々が自らを肯定するために発する言葉ではないのです。一国の総理が発する言葉が社会にどれほどのインパクトを与えるものかを認識せず、日本語の使い方をこうも歪曲した総理はこれまでおられなかったのではないでしょうか。
今、マスコミはあなたのけんか上手を褒めそやし、おもねってもおりますが、五年、十年後、小泉総理のワンフレーズポリティックスとその社会的影響の是非といいますか、その罪は明らかとなるでありましょう。
私と私たち民主党は、国会での議席では少数派となりはしても、斎藤隆夫のように、人々の改革熱に浮かされることなく、世界の大勢を達観し、国家内外の実情を認識するというあるがままに見るリアリズムを尊んで、これからも断固行動していくことを国民にお誓い申し上げ、さらに、総理の御答弁次第では再質問させていただくことを通告し、私の代表質問を終わります。(拍手)
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 円議員に答弁いたします。
今回の総選挙の投票結果についてでございますが、おかげさまで自由民主党と公明党合わせて過半数以上の議席を獲得することができました。国民の大きな支持を支えにして、今後とも、郵政民営化のみならず、もろもろの構造改革を断行していきたいと思います。前原新代表も改革競争をしたいということでございます。大いに切磋琢磨しながら、改革実現に向けて協力をしていきたいと思っております。
日本郵政株式会社の外資規制でございますが、日本郵政株式会社は公的な役割を担う会社であり、政府が安定株主として議決権の三分の一超を保有することとするとともに、特殊会社として主務大臣による監督規定を設けております。これにより、会社の経営の安定、適正な業務の遂行を確保できると考えられるため、外資規制は設けないこととしております。
財政再建への道筋でございますが、政府としては、二〇一〇年代初頭に政策的な支出を新たな借金に頼らずにその年度の税収等で賄えることを目指して、社会保障制度改革、三位一体の改革、公共事業費の削減など様々な分野の改革に聖域なく取り組んでおり、今後とも歳出歳入一体の財政構造改革を強力に進めてまいります。
基礎的財政収支改善に向けた中期的取組については、経済財政諮問会議における議論等を通じて、おおむね来年半ばを目途に改革の方向についての選択肢及び改革工程を明らかにし、平成十八年度までに結論を得る考えであります。
基礎的財政収支黒字化後の財政再建目標についてでございますが、二〇一〇年代初頭の基礎的財政収支黒字化後の財政再建目標をどう考えるかは重要な課題ではありますが、基礎的財政収支の黒字化に向けた中期的取組について結論を得ることとし、歳出歳入一体の財政構造改革を強力に推進することが必要であると考えます。
特別会計でございますが、受益と負担の関係を明確にできるなどの意義がある一方、近年、硬直化して無駄な支出が行われているのではないか等の問題が指摘されております。したがって、国全体としての一層の歳出の合理化、効率化の観点から、すべての特別会計の事務事業等を精査し、非効率なものを洗い出し、温存を許すことのないよう一層徹底した改革を行ってまいります。
円の国際化でございますが、日本経済全体として為替変動の影響を受けにくくなるほか、アジア域内経済や国際通貨体制の一層の安定といった観点からも望ましいものと考えており、政府としては、今後ともその一層の推進に向け、着実に取り組んでまいります。
根本的な防災対策として、国土づくりや都市づくりについてのお尋ねですが、水害、地震等の災害から国民の生命、財産、生活を守るため、危機管理の観点から東京圏等への過度な集中を是正し、国土全体を災害に強い構造としていかなければなりません。また、災害の発生に備えて、建築物の耐震化や密集市街地の改善を進めるとともに、堤防を始めとする防災施設の整備と防災情報の提供などを組み合わせた総合的な防災対策が必要であります。こうした取組を通じ、災害に強い国土づくり、都市づくりを進めてまいります。
地域開発立法の見直しや緑のダム事業、新しいまちづくり法制でございますが、地域開発立法については、地域をめぐる状況の変化を踏まえ、見直しが必要なものについては適時適切に見直しを行うとともに、適切な運用を図っております。
森林を健全に整備保全することは、災害を防止し、地球環境を保全する観点から重要だと考えておりますが、我が国の洪水は森林の保水機能をはるかに上回る規模で発生しているのが実情であります。そのため、治山治水の事業について、必要性を厳格に評価した上で、真に必要なものを効率的に実施することが引き続き必要であると考えております。
都市計画については、秩序ある土地利用を実現するため、これまで都市の区域外においても必要な土地利用規制を実施するなど、制度の充実を図ってきたところであり、今後とも、都市計画法と建築基準法による適切な役割分担により、計画的な土地利用を実現してまいります。また、緑豊かで美しい景観を形成するため、昨年、景観緑三法を制定したところであります。今後は、これらを積極的に活用して、地域の自主性を尊重しつつ、安全で魅力あるまちづくりを推進してまいります。
日中、日韓関係を含むアジア外交でございますが、中国や韓国を始めとするアジア諸国とは、ともに手を携えてアジア地域の平和と繁栄を実現していくことが重要であります。引き続き、これらの国々との間で意見が異なる個別の問題についても対話を深め、幅広い分野における協力と国民各層における交流を強化することを通じ、相互理解と信頼に基づいた未来志向の関係を構築していく考えであります。
東シナ海における資源開発でございますが、東シナ海における中国による資源開発の問題については、中国側と協議を行い、中間線東側の資源に影響を及ぼし得る中国側の開発について情報提供及び作業中止を求めるとともに、共同開発による問題解決の可能性を含め、率直な議論を行う予定であります。我が国の主権的権利を確保しつつ、東シナ海を協力の海とすべく努力する考えであります。
テロ特措法でございますが、諸外国の艦艇がインド洋上にて行っている海上阻止活動は、テロリストや関連物資の海上移動を阻止するものとして引き続き大きな意義を有しており、自衛隊の支援に対しては各国から引き続き大きな期待が寄せられているものと認識しております。
米国同時多発テロによってもたらされたテロの脅威は依然として存在しており、我が国としても、これを除去するための国際社会の取組に引き続き積極的かつ主体的に寄与していく必要があることから、同法の延長が必要と判断したものであります。
自衛隊のイラク派遣についてでございますが、サマーワの治安情勢はイラクの他の地域と比べれば依然として比較的安定していると考えており、これまでの情報を総合的に勘案して判断すれば、現時点で非戦闘地域の要件を満たさなくなったとは考えておりません。
現在の基本計画における派遣期間終了後の対応については、国会での議論を踏まえ、国際協調の中で日本の果たすべき責任、イラク復興支援の現状、諸外国の支援状況等を見ながら日本の国益を十分に勘案して判断すべきものと考えます。
在日米軍の再編でございますが、在日米軍の兵力構成見直しについては、在日米軍の抑止力を維持しつつ沖縄等地元の負担の軽減を図るとの観点につき日米間の認識は一致しており、これに基づく米国と協議を進めてきております。今後、可能な限り速やかに具体的な成果を出すべく政府一体となって取り組んでまいりますが、公表の時期、形式及び内容は現在まだ公表すべき段階ではございません。決定はしておりません。(拍手)
○議長(扇千景君) 円君から再質疑の申出があります。これを許します。円より子君。
○円より子君 改めまして、小泉総理に対し、郵政民営化法案ほか政治姿勢をお聞きしたいと思っております。
さきの総選挙におきまして、総理は郵政民営化賛成か反対かを国民に問われました。ただそれだけを争点になさったわけです。しかしながら、この郵政民営化の問題は国内問題ではありません。皆様も御存じのように、アメリカからは数度にわたり年次報告書でこの郵政民営化をすべきだと書かれておりますし、またアメリカの通商部からもそうした報告が出ております。これは国内問題ではなく日米問題であることは確実です。ところが、総理は全く世界の情勢、その日米関係について国民に知らせることなく、単なる国内問題として賛成か反対かを、国会の審議でも、またさきの総選挙でもお問いになりました。
先ほど私は代表質問の中で度々申し上げましたが、一国の総理の言葉は大変重い。一国の総理が発するメッセージは世界の情勢を国民に知らせるものでなければなりません。ところが、そうしたことを一切なさらず、国内問題に郵政民営化を矮小化させてしまいました。この罪は大変大きい。
私は、この世界の情勢をどうとらえ、どのように日本があるべきか、そしてそうした様々な問題を国民にしっかりと示し、これからの社会をどう築いていくか、改革は手段であり、その先にあるものは何か、その問いに、郵政民営化についてもお答えになっておられません。そのことをしっかりとお答えいただきたいということを申し上げ、再質問を終わります。(拍手)
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 再質問がございましたから、再度答弁いたします。
郵政民営化は、アメリカの問題から円議員は取り上げましたけれども、私はアメリカが郵政民営化の必要性を言うはるか前から郵政民営化の必要性を主張してまいりました。もちろん、郵政民営化は国内だけの問題ではありません。
今回の選挙の結果につきましても、郵政民営化は最大の争点でありましたけれども、それと同時に、四年余りの小泉内閣発足以来の改革を進めてきた成果と方針、これについても国民は審判を下されたと思っております。この声を厳粛に受け止めて、郵政民営化のみならず、これからももろもろの構造改革を断行していかなきゃならない。金融にしても物流にしても、国内だけを見ていいものではありません。国際社会に対応できる、国際競争力に立派に対応できるような体制をつくっていかなきゃならないと思っております。(拍手)
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