12月1日、「分断社会を乗りこえる処方箋」をテーマに井手英策さん(慶応義塾大学教授)、
和田勝さん(福祉社会総合研究所代表)のお二人を迎え、シンポジウムを開きました。世界を席捲していた、
行き過ぎたグローバリズムが終焉を迎えたことは、アメリカ大統領選をトランプ氏が制したことで明らかになり
ました。1%の富裕層と99%の貧困層に分断された社会を、トランプ氏はアメリカ国内重視主義の政策で乗り
越えようとしています。

我が国も経済格差・地域格差が広がり、分断社会に移行しつつあり、井手さんは財政税制面から、和田さん
は社会保障面から一早くこの分断社会を乗りこえる処方箋を提案してこられました。世界で劇的にパラダイム
が変わろうとしている今、人口が減少する一方の我が国では、さらなる日本人的叡智を絞って、この分断社会
を乗りこえる必要があります。

12月1日のシンポジウムは、その処方箋について考察したのですが、見事にお二人がその処方箋を提示して
下さり、コーディネーターの私は、ただお二人のお話を聞けば良いという大変気楽な役割なのに、お二人をお
招きできたことで皆さま「とても啓発された」「充実したいい時間を持てた」と喜んで下さり、懇親会に移ってから
も、お二人は質問攻めにあわれていました。

かいつまんでお話ししますと、今、日本人の6割が平均所得以下という中間層が危機にあるのに、他の国に比
べると格差があることを認めようとせず、よって格差是正への関心が薄い。そして政府は貧しい人だけを救済し
ている。すると、なぜ自分たちの税金が「働きもしない奴らの救済にあてられるのか」と、自分より貧しい人、弱
者をバッシングする。相模原事件はその典型と井手さんは言います。

そういう分断社会を終わらせるためには、収入や資金のある、なしに関わらず、誰にも普遍的な現物サービス
をする代わりに、全員に納税もしてもらう。例えば、年収2000万の人も200万の人も一律2割の税を払うと残り
は1600万と160万。440万の税のうち40万を国の借金返済に使うが、残り400万は2000万の人にも200万の
人にも200万ずつ教育、医療介護、住宅などのサービス配布をすれば実質1800万と360万の収入になり、
格差は10倍から5倍に縮小し、痛税感もなく、安心が得られるというのです。井手さんのいうのは格差是正が
目的ではなく、生活保障ができれば、結果的に格差は是正されるということです。

和田勝さんは、この「誰もが受益者」という井手さんの発想を20年も前に行政で実現した人なのです。
介護保険制度ができるまでは老人福祉法にもとづき、行政が必要と認めた人に対して行政処分としてサービ
スが提供されていましたが、公平に受けたいサービスが受けられず、格差が存在したし、介護が必要な高齢
者に対する社会資源も乏しかったので、医療があまり必要でない高齢者の社会的入院が増加していました。

そこで和田さんは誰もが公平20161201%e3%82%b7%e3%83%b3%e3%83%9d%e5%86%99%e7%9c%9fにサービスが受けられるようにと介護保険制度を考え出されたわけです。今は介護される人が増え続け、財源の問題等々出ていますが、介護の安心が得られるサービスが受けられる
なら、介護保険料を払ってもいいと国民が納得したということです。

分断社会を乗りこえる処方箋のひとつとして、「誰もが受益者」という財政戦略皆さまはどう思われますか。

分断社会を乗りこえる処方箋